最近、AIを使っていて少し疲れることがあります。
私は大学で有機化学を教えていますが、塾では中学生・高校生を教えています。普段から教材を作ったり、授業について考えたりする中で、AIを使わない日はほとんどなくなりました。本当に便利です。
分からないことがあればすぐに調べられる。教材のたたき台も作れる。自分では思いつかなかった方法も提案してくれる。
少し前なら数時間かかっていたことが、数分で終わることもあります。
でも最近、その便利さが少し厄介だなと思うようになりました。
AIに聞けば、いくらでも答えが返ってきます。
「もっと良い方法は?」
「他には?」
「もっと効率よくできない?」
聞けば聞くほど選択肢が増えていく。
ところが、人間が一度に処理できる情報には限界があります。
10個の方法を教えてもらえば、その10個について「自分にはどれが合っているのか」を考えなければならない。
情報を得ること自体は簡単になったのに、今度は情報を捨てるために頭を使うようになりました。
これは勉強でも同じです。
今はYouTubeを開けば勉強法がたくさん出てきます。SNSではおすすめの参考書が紹介され、AIに聞けば自分専用の勉強計画まで作ってくれます。
どれも間違っているわけではありません。
だからこそ難しい。
「あの参考書の方がいいのではないか」
「この勉強法も試した方がいいのではないか」
「もっと効率のいい方法があるのではないか」
そうやって方法を探しているうちに、肝心の勉強が進まなくなることがあります。
有機化学の実験でも、条件を増やせば増やすほど良い結果が得られるわけではありません。
温度、溶媒、濃度、反応時間、試薬の量。
変えられるものはいくらでもあります。
しかし、すべてを一度に変えてしまえば、結局「何が結果に影響したのか」が分からなくなります。
だから条件を絞る。
一つずつ確かめる。
そして、必要のないものは捨てる。
勉強も案外それに近いのかもしれません。
私たちが塾で生徒にしてあげなければならないことも、これから少し変わっていくのだと思います。
たくさんの情報を与えることだけが指導ではありません。
「今はこれをやろう」
「これはまだやらなくていい」
「ここまでできれば、次に進もう」
そうやって、目の前にある大量の選択肢を整理することも、これからの先生の大切な仕事になるのではないでしょうか。
AIによって「できること」は、これからもっと増えていきます。
だからこそ、
何ができるかではなく、何をするのか。
そして時には、何をしないのか。
自分でそれを決める力が、今まで以上に大切になるように思います。
……と、AIに色々聞きすぎて少し疲れながら、最近そんなことを考えています。